こんにちは、つつみ百貨店、更新担当の中西です。
さて今回は
つつみ百貨店のトピック~香典返しって?~
香典返しとは、故人の葬儀や法要の際に、香典をいただいた方に対してお礼の品を贈る習慣です。これは単なる返礼ではなく、故人への供養や弔意に対する感謝の意を示す大切な儀礼とされています。
香典返しの文化は、日本独自の弔事のマナーとして長い歴史を持ち、時代とともに形を変えながら発展してきました。今回は、香典返しの歴史やその背景、時代ごとの変化、日本社会における意義について深く掘り下げていきます。
1. 香典返しの起源|仏教と儒教の影響を受けた弔事文化
① 香典のルーツ(飛鳥時代〜平安時代)
日本における香典の習慣は、仏教の伝来(6世紀頃)とともに根付いたと考えられています。
✅ 「香奠(こうでん)」の語源
- 仏教では、「香」とはお線香や供物を意味し、故人への祈りを捧げる行為を指す。
- 「奠(でん)」は供え物を意味し、死者への供物として金銭を包む風習が生まれた。
✅ 平安時代の弔事と供物
- 貴族階級では、死者への供物として米や布を持ち寄る風習があった。
- 「香典」の概念はまだなく、葬儀の費用は遺族が負担するのが一般的だった。
この時代には、香典返しの概念はなく、弔問者が供物を持参する文化が主流でした。
② 鎌倉・室町時代|武家社会における弔問と香典の変化
鎌倉時代以降、武家社会が形成されると、葬儀の儀礼も変化しました。
✅ 香典の「現金化」が進む
- 武士階級では、金銭を包んで葬儀の負担を軽減する「経済的な香典」が広まる。
- これが現代の「香典」の原型となる。
✅ 「香典返し」に似た風習の誕生
- 室町時代には、香典を受け取った遺族が弔問客に「返礼の品」を渡す風習が見られるようになる。
- この頃は、故人の遺品や供物を分け与える形で行われた。
2. 江戸時代の香典返し|庶民の間で広まる弔事文化
江戸時代になると、仏教が庶民の生活に根付き、「檀家制度」の確立とともに葬儀の形式が定着しました。
✅ 「香典」の習慣が庶民に普及
- 江戸時代の庶民は、葬儀費用を「村や町内会」などの共同体で負担することが一般的だった。
- 個人単位で香典を包む習慣が徐々に定着し、香典返しの習慣も広がる。
✅ 香典返しの一般化
- 遺族が香典を受け取った際、「お礼の品」として「米・塩・布」などを返す文化が生まれる。
- 武士や商人階級では、「茶」や「漆器」などの高価な品が返礼品として用いられるようになる。
この時代には、香典返しは「香典を受けたことに対する感謝の気持ちを示すもの」として発展していきました。
3. 明治時代以降の香典返し|近代化とともに変化する弔事文化
明治時代以降、西洋文化の影響を受け、日本の弔事のあり方も変化しました。
① 明治・大正時代|近代葬儀の確立と香典返しの変化
✅ 香典返しの制度化
- 明治時代になると、近代的な貨幣経済が浸透し、香典の現金化が進む。
- これに伴い、香典返しも物品ではなく「金品」に変化するようになる。
✅ 西洋の葬儀マナーの影響
- 19世紀後半、西洋式の葬儀が一部で導入され、「葬儀後に正式な返礼をする」という習慣が強まる。
② 昭和時代|香典返しの大衆化とマナーの確立
✅ 戦後の経済発展と香典返しの多様化
- 戦後の高度経済成長期に伴い、香典返しが大衆化し、定型化する。
- 百貨店や専門店が「香典返しセット」を販売するようになり、利便性が向上。
✅ 「即日返し」と「後返し」の誕生
- 葬儀当日に香典返しを渡す「即日返し」が一般的に。
- 四十九日法要後に改めて返礼する「後返し」も定着。
✅ 返礼品の変化
- 緑茶・海苔・砂糖などの食品が主流となる。
- タオルや洗剤など、実用性の高い品が人気に。
4. 現代の香典返し|簡素化・キャッシュレス化の流れ
現在、香典返しは地域や家庭の価値観によって多様化しています。
✅ 即日返しが主流
- 葬儀当日に返礼品を渡す形式が一般的に。
- 返礼品には「志(こころざし)」と記された挨拶状を添える。
✅ オンライン化・カタログギフトの普及
- インターネット注文が普及し、「香典返し専門サービス」が増加。
- 受け取った人が自由に商品を選べる「カタログギフト」も人気。
✅ キャッシュレス社会と香典返しの変化
- QRコード決済・銀行振込など、香典のデジタル化が進行。
- 「香典をもらわない」という選択肢を取る家庭も増加。
5. まとめ|香典返しの歴史と未来
✅ 仏教の供養文化から生まれた香典と香典返しの習慣。
✅ 江戸時代以降、庶民の間にも広まり、感謝の意を示す儀礼に発展。
✅ 近代化とともに、返礼品の形が多様化し、合理的な方法が主流に。
✅ 現代では、オンライン化・キャッシュレス化により、さらに簡素化が進む。
香典返しは、日本人の「弔意への感謝を示す文化」として長く受け継がれてきました。今後も社会の変化に応じて進化しながら、「故人を偲び、感謝を伝える大切な習慣」として続いていくでしょう。